映画についての雑感

最新作から、懐かしい80, 90, 00年代の映画の思い出や、その他、海外アニメや小説、ゲーム、音楽などの雑多で様々な芸術作品について

DUNE / デューン 砂の惑星 レビュー(パート1) : 母子の物語

未来のビジョン

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『DUNE / デューン 砂の惑星という映画は、劇中でティモシー・シャラメ演じる主人公ポール・アトライデスが繰り返し見るような”未来のビジョン”を見せてくれる映画でした。その本来のテーマが完結するだろう続編、そして原作2作目を描くという3作目、その壮大なサーガの予感ーー。それはポールが見たように可能性の一つに過ぎませんが、しかし本作で蒔かれた種を刈り取るサーガが作られたとしたら、映画史に残るのではないかと感じます。もしかしたら商業的な大作映画の一つの分岐点となることすら有り得ると。他の思弁的なSF小説、例えばレム『惑星ソラリス』やアーサー・C・クラーク幼年期の終わり』などが、マニアックな小品としてではなく大規模予算の超大作として、商業的な妥協なくアーティスティックな感性で映画化される時代が来ることすらあるかもしれない。本作は2020年代のハリウッドの超大作としての没入感、迫力、映画的な魅力を備えていながら、まるで長編小説を読むように豊かで壮大な時が流れ、非常に挑戦的なテーマを描き出す、文学的な作品でした。

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©️ WARNER BROS PICTURES

以下、ネタバレありで本作のテーマについてレビューします。
長くなってしまったので今回はその前半です。

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『DUNE / デューン 砂の惑星』 プレビュー : 合わせて観ると更に楽しめる2作品

ドゥニ・ヴィルヌーブ監督の『DUNE / デューン 砂の惑星・・・1年越しに公開された超期待作を10/15の公開初週にIMAXシアターで観てきて、あまりの傑作っぷりに、それ以来興奮が冷めず何も手をつかない状態になってしまっている。何かデューンについてアウトプットしたいという生理的な反応と、この娯楽大作と言い切ることが困難な芸術的超大作が果たしてヒットするのかという不安に苛まれ、少しでも興味のある方には劇場にーーできれば足を運べる範囲で最高の設備を備えた劇場にーー行って体感して頂きたい、1人でも多くの人に布教したいという思いで、何も考えずに本記事を書き始めています。正直、本作をきちんと総括してレビューすることは今の僕にはすぐにはできないので、まずはネタバレ一切なしで本作の圧倒的なスケールと没入感について、プレビューとして述べていきます。また映画と合わせて観ることでより楽しめるだろう2作品 を紹介します。参考にして頂ければ幸いです。

ネタバレありレビューはこちら
numbom2020.hatenablog.com
numbom2020.hatenablog.com

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©️ WARNER BROS PICTURES
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『カジノ・ロワイヤル』から『スペクター』ーーダニエル・クレイグ版”007”の魅力

大変長い間待たされたダニエル・クレイグ版”007(ダブルオーセブン)”の完結編『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ (No Time To Die)』が遂に10/1から公開されました。実はダニクレ版007の長年のファンである僕も当然のことながら、公開直後に観てきましたよ。もうビリー・アイリッシュの歌うセンチメンタルなオープニングテーマ "No Time To Die" が流れ始めるところから涙ぐみましたよ! 完璧な映画では全然ないですが、とても感動しました。
さて、本記事ではそんな感動的な『ノー・タイム・トゥ・ダイ』のフィナーレを少しでも多くの人に楽しんで頂けるよう、”007”についての豆知識、これまでのダニエル・クレイグ版”007”シリーズの4作品の紹介と、その魅力についてご紹介したいと思います。世間一般の、というより僕個人の感想が多分に含まれていますが、そこはご容赦ください•••

基本ネタバレなしのつもりですが、最新作『ノータイム・トゥ・ダイ』以前の作品について軽微なものはあるかもしれません。前情報一切なしで観て頂く方が良いので、今後見る予定の方は観賞後に読んで頂ければ大変嬉しいです。
2021年9月よりAmazon Primeで”007”シリーズ全作品が会員なら無料で公開されていますので、今は”007”に触れるチャンスですよ!

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ヴィクトル・ユゴーのエスメラルダ、コゼットと”アデルの恋の物語 (1975)”

アデルの恋の物語 (原題 : L'Histoire d'Adèle H.)”という映画を知っていますか? フランス恋愛映画界の巨匠 フランソワ・トリュフォー監督 (1932-1984) の作品で、『レ・ミゼラブル』『ノートルダム・ド・パリ』などで知られる19世紀のフランスの文豪ヴィクトル・ユゴーの娘、アデル・ユゴーの狂騒的な半生を描いた伝記映画です。おそらくこの映画はトリュフォー監督やアデルを演じたイザベル・アジャーニと共に語られることが多いのだと思いますが、趣向を変えてヴィクトル・ユゴーの描いた文学の世界との相似性みたいなものを書いてみようと思います。ユゴーの小説は結末までのネタバレなし(?)、映画”アデルの恋の物語”については結末までのネタバレありです。映画を観てみようと思ってる方はこの下のあらすじまでにしておいてくださいね!

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ラーヤと龍の王国 : ラーヤは一体何を信じたのか?

先日、映画館で鑑賞しました。エヴァンゲリオン人気で混雑してるかなと思ったけど、日曜の夜だったこともありガラガラ。ラーヤはディズニーが日本の映画業界とちょっとトラブってるらしく、大手シネコンで上映されない事態に陥っていて、近年のディズニー作品と比べると上映館も広告もすごく少ない。ですが、観た方ならお分かりだと思いますが、ディズニー近作の中でも絵作りやアクション、メッセージ性などかなり意欲に富んだ作品です!

実際この作品、批評や宣伝では「新しい」とか「現代的」だとか「アップデートされた」などと評されることが多いのですが、何がどう新しいのか、特徴的なのか。宣伝で言っている「信じる」とは、一体何を信じたのか? ネタバレありで述べてみます。

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ラーヤと龍の王国 ポスター©Disney
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