映画についての雑感

最新作から、懐かしい80, 90, 00年代の映画の思い出や、その他、海外アニメや小説、ゲーム、音楽などの雑多で様々な芸術作品について

『DUNE / デューン 砂の惑星』 プレビュー : 合わせて観ると更に楽しめる2作品

ドゥニ・ヴィルヌーブ監督の『DUNE / デューン 砂の惑星・・・1年越しに公開された超期待作を10/15の公開初週にIMAXシアターで観てきて、あまりの傑作っぷりに、それ以来興奮が冷めず何も手をつかない状態になってしまっている。何かデューンについてアウトプットしたいという生理的な反応と、この娯楽大作と言い切ることが困難な芸術的超大作が果たしてヒットするのかという不安に苛まれ、少しでも興味のある方には劇場にーーできれば足を運べる範囲で最高の設備を備えた劇場にーー行って体感して頂きたい、1人でも多くの人に布教したいという思いで、何も考えずに本記事を書き始めています。正直、本作をきちんと総括してレビューすることは今の僕にはすぐにはできないので、まずはネタバレ一切なしで本作の圧倒的なスケールと没入感について、プレビューとして述べていきます。また映画と合わせて観ることでより楽しめるだろう2作品 を紹介します。参考にして頂ければ幸いです。

ネタバレありレビューはこちら
numbom2020.hatenablog.com
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©️ WARNER BROS PICTURES

なぜデューンなのか

そもそも何故1965年のSF小説を21世紀になって20年も過ぎた今になって映画化しようとしているのか。それはデューン / 砂の惑星という小説が発表されて以来半世紀に渡って様々な人々に影響を与え、一種のカルチャーとなり、姿形を変えながら僕たちの身近なものであり続けていたというのが大きな理由の一つでしょう。有名なところでは、スターウォーズ宮崎駿風の谷のナウシカなどの映画作品、小説、日本のアニメ・漫画への影響は計り知れないし、人間の潜在能力を引き出すという超自然的なモチーフや舞台となる砂の惑星<アラキス>の砂漠が代表するような自然主義、ある意味ドラッギーな価値観は、ヒッピー文化やスピリチュアルな層にも多大なインスピレーションを与えたんじゃないかと思います。自分としても『デューン』のことを知れば知るほど、「これの元ネタってデューンなの?!」ということに出会す回数が増えましたね。

そういう訳で、クリエイターや文化人を刺激してやまない、ある意味でのルーツ的な『デューン / 砂の惑星』を映画化したいというのは、一部のクリエイターにとっては長い間ToDoリストに入ったままチェックを入れられないアイテムだったのだと想像できます。

本作を監督するドュニ・ヴィルヌーブ監督 (代表作『ブレードランナー2049』、『メッセージ』) も正にそんな1人。実際、様々な媒体のインタビューで少年時代に読んだデューンに多大な影響を受けたことや、デューンを映画化することがキャリアの目標であると憚らずに語っています。中でも『アート・アンド・ソウル・オブ・デューン』(タニア・ラポイント著、阿部清美 : 訳、DU BOOKS)の中で著者でありヴィルヌーブの妻ラポイントに語った内容が、ティーンエイジャー時代の彼の本気を物語っています。

ティーンエイジャーだった僕は、あの物語に夢中になった。シリーズ全作を読み、「デューン 百科事典」も家にあった。卒業記念リングの内側にはムアッディブの言葉を刻み、卒業アルバムにも「デューン」からの引用文を乗せている。そのくらい大好きだったんだ”
『アート・アンド・ソウル・オブ・デューン』より

僕は元々ヴィルヌーブ監督のファンであり、非常に信頼感のあるクリエイターです。彼の特色を挙げるなら、設定やシチュエーションの中でもがく人間の姿を描くと言う点ですね。題材がトリッキーだったりSFだったりすることが多いですが、映画の興味の中心は常に人間であるところが僕は好きですね。

デューンとは

ではデューン / 砂の惑星とはどういう小説なのかというと、フランク・ハーバートが書いた全6作からなる壮大な宇宙叙事詩の第1作にあたります。

邦訳版は早川文庫から新訳版 (訳 : 酒井昭伸) が上中下の3巻で出ています。映画の公開に合わせて特別仕様のカバー版が発売中です。また最近、待望のKindle版がリリースされています。残念ながら第2~6作は絶版ですが、映画の人気次第で再販、新訳などの展開あるかも知れません。早川書房さんお願いしますよ!

”格となるテーマが「宗教と政治の交錯」であるこの小説は、ポップカルチャーに多大な影響を与えてきた。もちろんフィルムメーカーとしての僕も影響を受けたよ”
『アート・アンド・ソウル・オブ・デューン』より、ヴィルヌーブ監督の談話

物語の舞台をネタバレの無い範囲で説明します。
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遠い未来の人類達は、中世的封建社会に逆戻りしている。地球を遠く離れた惑星を領地として、皇帝と貴族諸侯からなる銀河帝国が築かれている。舞台となるアラキスと呼ばれる”砂の惑星ーーデューンは、通り名の通り惑星全体が砂漠化しており、人類の生存には適さない。しかしそこには巧妙に土地に適応したエキゾチックな先住民フレメンが住んでおり、そして恒星間航行に必須となる貴重な資源、メランジと呼ばれるスパイスが採取される場所でもある。星の領有権を巡って二つの有力諸侯、長年の敵対関係にあるハルコネン家アトライデス家は再び争うことになる。・・・

深淵で示唆に富み、大国と小国、支配と人権、西洋と東洋、ジェンダー神秘主義、運命論、社会と個人、等々・・・、数多くの社会的・内面的テーマを同時に扱っています。

その他にもコンピュータを放棄して人間の潜在能力を引き出すことで対応したディストピアともユートピアとも言える未来図 (しかもその潜在能力を高めるためにLSD : 合成麻薬を連想させるスパイスを使用する)や、血統を操作して神秘的な力を操れる優秀な人間を生み出そうとするスピリチュアル優性説とでもいうような不気味な思想など、本作の魅力的なトピックは挙げていけばキリがありません。

そして何より重要なのは、人類の救世主となる過酷な運命を背負った主人公ポール・アトライデスの存在に他なりません。

ただこういった多種多様なTIPSの面白さの集合体であるが故に、「映像化不可能」と言われていたのです。
それには他にも最もな理由があります。原作が1965年に発表されて以来、幾度も映像化に挑戦されてきているに関わらず、決定版というべき作品が出ていないからです。次節では70~80年代の映画化の試みについて、それら2作品を紹介します。

ホドロフスキーのDUNE』(2013)

まずは一作目、アレハンドロ・ホドロフスキー監督が1970年代に手掛けようとして、最終的には頓挫した超大作『DUNE』、21世紀に入り、その存在を一躍有名にしたドキュメンタリー映画ホドロフスキーのDUNE』です。ある意味、この映画の存在があったことで、2010年代にデューンを再評価しようという流れが生まれたのかも、知れません。(少なくともこの映画でホドロフスキーはキャリアを復活させました)。正直言うと、僕が『デューン』に興味を持ったのはこの映画がきっかけでしたね・・・。以下ホドロフスキーのDUNE』のネタバレありのため、観ようと思ってる方はその後で読んでくださいね

現在Amazon Prime無料公開中!

内容としては、ホドロフスキー版DUNEの企画の立ち上げから製作前準備、キャスト、スタッフのリクルート、そして製作中止に至るまで、主にホドロフスキー監督のインタビューと当時の膨大なコンセプトアートなどで振り返るものですが、とにかくホドロフスキー監督の個性が強烈すぎる! 氏の刺激的な個性の記録としても十分見る価値ありのドキュメンタリーです。

予告編

ホドロフスキーの個性に巻き込まれる形で、映画『DUNE』のスケールは天文学的なスケールへ拡大していきます。ホドロフスキー氏が当時インスピレーションを得たアーティスト達に直談判して、錚々たるメンバーが次々と企画に参加していくのです。ストーリーボードやキャラクターデザインにバンド・デシネ (フランスの大人向けヴィジュアルノベルのこと)作家のメビウス、音楽には伝説的なプログレッシブロックバンドであるピンク・フロイド、出演者は主人公一族の宿敵ハルコンネン男爵役に『市民ケーン』の監督であり名優オーソン・ウェルズ、主人公のライバル、ファイド・ラウサ役にはロックバンド、ローリング・ストーンズのボーカル、ミック・ジャガー、そして皇帝役がなんと画家のサルバドール・ダリ(!!)をキャスティング!

ダリのエピソードは強烈で、莫大な出演料もさることながら当時付き合っていた恋人を重要な役柄で出演させることなど、出演にあたっての条件も皇帝レベルの待遇を求めていることも笑ってしまう。とにかくこのドキュメンタリーはホドロフスキー版『DUNE』の妄想的なまでの恐るべきスケールと、フランク・ハーバートの原作『デューン』同様に映画界などアート界隈や後のオタクカルチャーに与えた広範な影響を含め、70年代にとんでも無い試みが為されていたことに対する衝撃を味わえます。ただ最終的には原作の世界観を表現するために10時間の上映時間を求めたことで製作側が怖気付き、頓挫してしまうのです。

この映画は失敗に終わってしまいましたが、ホドロフスキーメビウスとの出会いは、その後『L’INCAL (アンカル)』というバンド・デシネ で結実します。ある意味でホドロフスキーデューンというべき、壮大な宇宙の運命をかけた内容で、非常に難解。一読の価値ありです。

spice.eplus.jp

(2021.11.14 追記)
映画化されるようです、なんとタイムリー!
virtualgorillaplus.com


デューン / 砂の惑星』(1984) デビッド・リンチ監督版

ホドロフスキー『DUNE』が頓挫してから約10年後、映画化権を獲得したディノ・デ・ラウレンティスは、デビッド・リンチ監督を見出し、デューンの映画化に乗り出す。以下デビッド・リンチ版『デューン / 砂の惑星』のネタバレありです!

少し前まではPrime無料だったのですが、今はレンタルのようです

かつて映像化不可能とさえいわれた、フランク・ハーバードのSF大河文学「デューン 砂の惑星」(早川書房刊)。イタリア映画界の名プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスは、当時『エレファント・マン』(80)で喝采を浴びた奇才デヴィッド・リンチを招聘し、長年の構想の末に同著書の映画化を実現した。
『デューン/砂の惑星』スタジオの支配体制に翻弄された、奇才デヴィッド・リンチ唯一無二のSF映画|CINEMORE(シネモア)

イレイザー・ヘッド』(1976)、『エレファントマン』(1980) で名声を得ていたデビッド・リンチは、ジョージ・ルーカスから『スター・ウォーズ エピソード6 / ジェダイの帰還』のオファーを受けるも、「自分がやる映画ではない」という理由で断ったそうですが、『デューン / 砂の惑星』はインスピレーションがあったのか、引き受けます。

このデビッド・リンチ版『デューン』は批評的・興行収入的に失敗に終わってしまいました。というのも、長大かつ複雑な原作小説を一本の映画で語るため、当初は5時間近いラフ編集版だったところ、商業的な制約、製作サイドから一方的に2時間17分にカットされてしまい、内容を理解するのが困難なカルト映画になってしまったのです。

元々、小説に書かれた浮世離れした遠未来の物語は、やや感覚的に捉えづらく、場合によってはシュールになりかねない設定・概念が頻発します。それをこの映画はそれをそのままほとんど説明もなく描いているので、ただただシュールで不気味な雰囲気映画になってしまいました。あの悪夢のような衣装デザインや、水槽の中のアイツの表現だとかは非常に魅力的ではありますが。あと主人公が発射する”かめはめ波”的な技の掛け声「チャー・スカ!」「イー・チャ!」の響きだとか、独特の愉快なエンディングだとか、カルトな魅力は否定し難いものがありますが・・・ リンチ監督はさぞや無念だったろうと感じます。

この2作品の顛末を持っても、『デューン』の映画化においては、原作小説のエッセンスを再現する為の挑戦と商業的妥協との線引きが極めて困難だったということを感じます。

ヴィルヌーヴデューンはどうだったか

この大変困難なプロジェクトを2000年代半ばから頭角を現し始めた制作プロダクション、”レジェンダリー・ピクチャーズ*1が映画化権を獲得したことで、みたび実現に向けて動き出します。そしてドゥニ・ヴィルヌーブのような小説『デューン』をティーンエイジャーの頃に触れた世代のクリエイターの台頭も、ある意味では後押ししたと言えるでしょう。コロナ禍による1年以上の延期を経て、遂に2021年、21世紀の映画『デューン』が大きな期待と不安の中で公開されました。

ヴィルヌーブ版『デューン』はどうだったのか、既に結論は言っていますが、控えめに言っても一見の価値ありの名作だと言えるでしょう。その圧倒的なスケールと芸術性、そして凄まじい没入感。まだ第一部とは言え、恐ろしいくらいに現代的なテーマを内包している”予感”。膨大な設定というディテールを安易にセリフで説明せず、でも自然に理解できる演出。全てが高い次元で表現されていて、まぁそんな小難しいこと抜きにめちゃくちゃ面白かったです。
本項ではその圧倒的なスケールと没入感についてネタバレなしプレビューとして述べていきます。

予告編 第一弾リンク こっちのVer.が好き

圧倒的なスケールと没入感

監督はまず惑星アラキス ーーデューンに我々を誘う為、壮大なコンセプトアートとそれをスクリーンで完璧以上に再現すること、そして恐ろしいまでに体感的な音響、更にハンス・ジマーと共に感情や情景を想起させる得体の知れない音楽を用意しました。その為にIMAXでの上映がとてつもない貢献を果たしています。

下記のリンクから引用ですが、IMAX上映版はまずアスペクト比が異なります。上下の高さが通常上映の比率に比べてかなり広いのですが、IMAXで撮影された一部のシーンでは、この部分をかなり有効に使って画面を構成しています。登場人物と“余白”である背景=登場人物達の眼前に広がる景色をカットを分けずに同時に表現することによって、テンポを変えずごく自然に世界に引き込まれていくのです。また、砂漠の光景は砂埃まで感じられ、宇宙では吸い込まれるような闇、物理的な画面の大きさによって、それらが実際に目の前にあるように感じます。

本作のIMAX®カメラで撮影されたシーンは、IMAX ®シアターでのみ、監督の意図した映像そのままに、目の前のスクリーンいっぱいに広がります。
IMAX ®シアターでのみ、見える範囲がぐっと広がるシーンが1時間以上含まれており、グランドシネマサンシャイン 池袋のIMAX®レーザー/GTテクノロジーでは1.43:1の画角、通常スクリーンと比べて、最大 40%増の映像を体感できます。

https://www.cinemasunshine.co.jp/theater/gdcs/news/2554.php

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池袋グランドシネマサンシャイン HPより © Cinema Sunshine Co., Ltd. All Right Reserved.

そしてその絵作りは、ただ圧巻です。同監督の『ボーダーライン』、『メッセージ』、『ブレードランナー2049』を通して磨きをかけてきた絵画的なショットは、本作で一つの到達点に達し、ストーリーテリングに大いに寄与しています。長大な物語の動と静を、この絵画的なショットの使い分けによってリズムを付けているのです。単調にならず、意味深な物語の先が気になると同時に、スクリーンを覆う圧倒的な"絵"を前に呆然としてしまいます。

ワンシーン毎にじっくりと時間をかけて出来事や人物の感情を詩的に描いていくヴィルヌーブ監督の手法は本作の雰囲気に非常によく合っていると言えるでしょう。
僕自身、長いワンカットで余韻を残すようなタイプの演出が大好きで、映画は上映時間長い方が良いと思っています。『2001年宇宙の旅』や『惑星ソラリス』のような雰囲気がすごく好きだし、全然毛色が違うけど、個人的なオールタイムベスト映画は『アデル、ブルーは熱い色』です。映画の中の経過時間と、観客である僕の体感時間が近づく錯覚をおぼえるような演出が、正に他者の経験を追体験するような感覚にダイブできるのです。逆にスピーディーな映画を求める人には本作は少し合わないかも知れません。

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©️ WARNER BROS PICTURES

IMAX上映について、日本では、先のリンクで挙げた池袋グランドシネマサンシャインと109シネマズ大阪エキスポシティの2箇所限定でフルサイズ (アスペクト比1.43:1) 上映がされるそうです。通常スクリーンと比べて最大40%増だそう。とんでもないですね・・・
その他の全国のIMAXシアターでは一部シーンをアスペクト比1.9:1で上映されます。こちらも通常と比べて最大26%増です。本作はIMAXで見ることをマジでお勧めしますよ!

映画館トップ・上映スケジュール | グランドシネマサンシャイン池袋
109シネマズ大阪エキスポシティ 映画館、シネコン、上映スケジュール | 109CINEMAS

音楽と音響

音楽と音響について、超重低音を用いた体感的な表現で映画館の音響設備を思う存分に生かしており、これが没入感に大きな役割を果たしています。本作の音楽は『デューン』の大ファンだというハンス・ジマーが担当しています。劇場全体が振動するような音響は、彼がかつて担当した『インターステラー』(2014)の夢と現実の間を行き来するような名スコアや、ヴィルヌーブ監督の『ブレードランナー2049』(2017) にも似ているが、どこか違うサウンドです。エレクトリックサウンドが宇宙的なテーマを表し、しかしそれと並行して、オリエンタルな音楽、メインコーラスを歌う力強い女性ボーカル (これがポールの内なる声を象徴しているのでしょうか)、声とも音とも付かない謎めいたバックコーラス、それらが渾然一体となって、劇伴というより心の中で流れている音楽のように感じさせます。荒々しく不気味な雰囲気の世界に引き込まれるような音楽です。

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©️ WARNER BROS PICTURES

ハンス・ジマーとヴィルヌーブがどれだけ『デューン』に惹かれているかは、このコメントで飛び交う言葉のパワーからも察しがつきますね。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は「私たちは、音楽にはスピリチュアルなもの、聖なるものが必要だということで一致しました。魂を高揚させる、聖なる音楽だけが持っているものです。ハンスの曲にはそれが確実に反映されています」とコメントしている。
『DUNE/デューン 砂の惑星』サントラが無料公開中 ハンス・ジマーが手がける音楽はアルバム3枚で発売 | VG+ (バゴプラ)

また音楽だけではなく、本作は音響がとにかくすごいです。内容はネタバレになりかねないので伏せておきますが、『デューン』には概念的な設定が数多く登場し、映像化にあたって一歩間違えば陳腐になりかねない危うさがあります。本作の音響デザインはそういった形容し難い”概念”の映像化に多大な貢献を果たしています。恐らくアカデミー音響効果賞は受賞するでしょう。

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DUNE Official Soundtrack | Full Album - Hans Zimmer | WaterTower

ヴィルヌーブ版プレビューの最後に

ということで、本稿では、ほぼヴィルヌーブ監督が用いたテクニックについてしか触れてませんが、これから鑑賞される方の興を1%でも削ぎたくないという苦肉の策でございます。本作の魅力の一つは当然、描かれたテーマにあります。その部分は当然映画の核心に触れるので、本記事冒頭のリンクにあるネタバレありのレビューの方で詳しく述べてます。またヴィルヌーブ版の最大の特徴の一つは、その構成にあると言えるでしょう。この部分も個人的には度肝を抜かれたと言っておきましょう。

最後にヴィルヌーブ監督がインタビューで語った印象的な言葉で締めさせて頂きます。”恐怖に打ち勝つ”といった『デューン』的な表現が自然に出ていることが可笑しいですが、彼が侵した”リスク”とは何だったのか、是非劇場で確かめてください!

「アーティストがなにかに挑戦する際は、必ずリスクと直接結びついています。芸術的な挑戦は自分の限界を超えようとすることであり、これまでにない領域に踏み込もうとすること。そのためには、失敗も視野に入れて選択や決断をしなければなりません。テーブルの上のすべてのチップを賭けて、安全装置がない状態でジャンプするのが大好きです。これまで私が関わってきたすべてのプロジェクトは、リスクに触発され生まれ、結果は恐怖に打ち勝つことによってもたらされました。映画化を決めてから、毎日のように自分自身の恐怖や挑戦、リスクと対峙しなければなりませんでした。最も大きなプレッシャーは、原作を読んだ10代の自分に対するものです。世界を征服したいと本気で考えていた野心的で傲慢なティーンエイジャーが持っていたエネルギーに再び触れ、その時に思い描いたビジョンに接触したかったからです。それは簡単なことではありませんでした」
「デューン」で大勝負に出たドゥニ・ヴィルヌーヴ監督&レベッカ・ファーガソンに独占インタビュー|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS







*1:バットマンの傑作リブート『ダークナイト』や、名作シリーズを復活させた『ジュラシック・ワールド』、オタクの欲望に忠実なハリウッド版『ゴジラ』の復活、『パシフィック・リム』など、オタクっぽい映画を量産しているプロダクション