映画についての雑感

最新作から、懐かしい80, 90, 00年代の映画の思い出や、その他、海外アニメや小説、ゲーム、音楽などの雑多で様々な芸術作品について

『カジノ・ロワイヤル』から『スペクター』ーーダニエル・クレイグ版”007”の魅力

大変長い間待たされたダニエル・クレイグ版”007(ダブルオーセブン)”の完結編『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ (No Time To Die)』が遂に10/1から公開されました。実はダニクレ版007の長年のファンである僕も当然のことながら、公開直後に観てきましたよ。もうビリー・アイリッシュの歌うセンチメンタルなオープニングテーマ "No Time To Die" が流れ始めるところから涙ぐみましたよ! 完璧な映画では全然ないですが、とても感動しました。
さて、本記事ではそんな感動的な『ノー・タイム・トゥ・ダイ』のフィナーレを少しでも多くの人に楽しんで頂けるよう、”007”についての豆知識、これまでのダニエル・クレイグ版”007”シリーズの4作品の紹介と、その魅力についてご紹介したいと思います。世間一般の、というより僕個人の感想が多分に含まれていますが、そこはご容赦ください•••

基本ネタバレなしのつもりですが、最新作『ノータイム・トゥ・ダイ』以前の作品について軽微なものはあるかもしれません。前情報一切なしで観て頂く方が良いので、今後見る予定の方は観賞後に読んで頂ければ大変嬉しいです。
2021年9月よりAmazon Primeで”007”シリーズ全作品が会員なら無料で公開されていますので、今は”007”に触れるチャンスですよ!

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(c)2021 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.

“007”シリーズについての基礎知識

ダニエル・クレイグ版に限らず”007”シリーズはどの作品から見ても楽しめるようになってます。しかしシリーズの豆知識的なことを知っていた方が、より楽しめるかもしれません (自分で「発見」する楽しみもありますが!) 1960年代から続く大変歴史あるシリーズであり、またイギリス映画ということもあるのかとても伝統的な作風なので、まだ触れたことない方や今まであまり興味なかった方、特に(僕も含めて)後追いの映画ファンにはなかなか独特かつ新鮮な世界観だと思います。

原作はイアン・フレミング同名シリーズ。本稿では映画版の内容について触れるので、原作のイメージとは少々異なるかもしれません。

ジェームズ・ボンドが何者なのか*1ーーイギリス諜報機関MI6のスパイで、アクション映画だということーーは大体皆さん知ってると思います。面白いのは、全25作品、有名な初代ショーン・コネリーから数えて6人の役者が演じてますが、作品毎、役者毎にゆるくリセットされつつもゆるく共通の世界観を背景にしているところでしょう。ボンドの役者がショーン・コネリーからジョージ・レーゼンビーロジャー・ムーアに変わっても、なんだかコネリー時代の経験や記憶を持ってるような、持ってないような。そもそも同じ役者でも前作から繋がってるような、いないような。ボンド役は変わっても上司の”M”やメカ担当の”Q”*2は同じ役者が同じ性格で演じ続けていたり、そんな曖昧な雰囲気の世界観なのです。まぁ多分ドラえもんサザエさん方式ですね

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ゴールドフィンガー』より、ショーン・コネリー演じるボンド (c)2021 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.


そしてエンターテイメント重視の為、”007”定番のお約束的な展開が多数用意されてます。だいたい毎回、世界を陰で動かす壮大な悪役が出てきて、良い感じに世界各地の観光地に現れます。敵を追って旅するボンドの前には良い感じの女たち (=ボンドガール) が何人か現れて、最初に出てきた女はだいたい残酷に殺されます…。そして悲劇に心を痛める間もなく2人目の女が出てきて、めでたく恋が実り敵の野望も打ち砕いてハッピーエンド、が典型的なジェームズ・ボンド ストーリーです。めっちゃ安直ですが、フィクションと割り切って逆に安心して楽しめます。


ここまで紹介したからには、ダニエル・クレイグ以前の作品の中で、僕のオススメの”007”を挙げておきます

ロシアより愛をこめて』 (1963)

 まだ方向性が定まっていなかった頃の作品。後のシリーズに比べてシリアスかつダンディなショーン・コネリーのボンドが見られる。ある意味ロードムービー的なロマンチックなオリエント鉄道の旅や美しい映像が印象的

ゴールドフィンガー』 (1964)

 前作と対象的なこの作品が後のボンド映画の方向性を(多分)決定づけたと言えるでしょう。コメディタッチな雰囲気とユーモアあふれるボンド像、そして壮大な野望に燃える残虐だけどちょっと変人な悪役、謎の怪力用心棒、取っ替え引っ替え出てくるボンドガール。そしてゴージャスな雰囲気。


007は二度死ぬ』 (1967)

 上であげた2作と異なり、映画としての完成度は決して高くないのですが、日本を舞台にしたボンド映画というところが楽しい一作です。浜美枝若林映子がボンドガールとして登場し、ホテルニューオータニや60年代の東京の景色を”007”的な観光地としてのショットで切り取った貴重な作品。一見の価値あり!


女王陛下の007』 (1969)

 ダニエルクレイグ版に影響与えているだろう、ショーン・コネリー版から打って変わってハードボイルドでアンニュイな雰囲気が全編に漂う異色のボンド作品。主演ジョージ・レーゼンビーは本作限りとなったのが惜しい。作品の空気感や、雪山の診療所からの一連のアクションシーンなどは、後年の”007”シリーズだけではなく、クリストファー・ノーランの『インセプション』やウェス・アンダーソンの『グランド・ブタペスト・ホテル』などなど、様々なクリエイターに影響を与えていると思われる。


ダニエル・クレイグ版の魅力

さて、ダニエル・クレイグ版はこれまでの”007”シリーズ同様、独自の個性がありながらも、シリーズの伝統を抑えつつ現代的なケレン味のあるアクション大作として、まず普通に楽しめる作品になってます。

特にアクション描写は“007”シリーズの伝統に忠実な、無敵のスパイとしてのあり得ないユーモアのある大技で驚かせ、笑わせてくれる王道の流れを汲みながらも、2000年代からYouTubeなどで流行り始めたエクストリームスポーツ的なリアル基調のスタントをベースにしています。おかげで今までのシリーズにないシリアスと大袈裟さのバランスが絶妙な派手で見応えのあるアクションが展開されます。シリーズお馴染みのオープニングテーマ曲までの冒頭数分は、豪華さや派手さ、見せ方の巧さにおいて、毎回期待を裏切りません。

そして何よりボンドという典型的なキャラクターを、繊細で人間らしい一人の男性として描き直した点が大変魅力的です。

ここまで007シリーズについて説明してきましたが、勘の良い方なら実はシリーズがショーン・コネリー版で形作られたボンド映画のフォーマットに対して、製作者が意図してないメタフィクショナルな構造を持っていることに気付かれたかもしれません。

そしてダニエル・クレイグがジェームズボンド役を演じたカジノ・ロワイヤルから最新作『ノータイム・トゥ・ダイ』まで5作品は、シリーズで初めてリブートの形式を取っています。以前の作品から切り離された独立したシリーズ、以前とはっきりと別人のボンドであることが、第一作『カジノ・ロワイヤル』の設定ーージェームズ・ボンドが最初の任務を担当する物語ーーや製作者のコメントから明示されてるのです。(それでもやっぱり何故か”M”はジュディ・デンチが続投していますが)

ダニエル・クレイグ版はジェームズ・ボンドという個人が”007”というエージェントになっていく話と、ダニエルクレイグ演じるジェームズボンドがショーン・コネリー版に代表されるいわゆるジェームズボンド=007になっていくことを同時に描いているのです。このジェームズボンドというのは、軽妙なユーモアがあって、悪党を躊躇なく殺し、恋人を取っ替え引っ替えする派手好きのプレイボーイということです。

そして、その過程でこのシリーズがメインテーマとするのは、なんと”孤独”“葛藤”、そして“不信(と信頼≒愛)”なのです。それをまるで文芸映画のように、悲哀を耽美しながら描きます!

例えば『カジノ・ロワイヤル』のヒロイン、ヴェスパーと恋を深めていく流れは正に典型でしょう。軽薄で女たらしな雰囲気のあるボンドに対して最初は警戒感を抱いていたヴェスパーですが、ボンドが刺客を殺害する場に居合せてしまったことで酷く動揺してしまいます。ショック状態で着衣のままシャワーを浴びて返り血を流そうとするヴェスパーに対して、ボンドはどう接すれば良いか分からず、ただそっと彼女に寄り添うのです。この不幸な出来事をきっかけに2人はお互いに少しずつ信頼を深めていきます。セクシーで軽薄なコミュニケーションしかできないボンドが、本当に心を通わせる必要に迫られた時に初心で純情な一面を見せる名シーンです。

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カジノ・ロワイヤル』より (c)2021 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.

ある意味、ダニエル・クレイグジェームズ・ボンドは、製作者達自らがシリーズを通して表現してきたショーン・コネリー的な「洗練されたマッチョイズム」ーー旧来のダンディーさ、クールで完璧な男らしさ、ヒーロー観ーーの現代的な翻案です。己の身一つを頼りに戦い、運命に翻弄される悲劇のヒーローであるクレイグ版は、いかにも「ボンド」らしい飄々とした立ち振る舞いの裏に傷付きやすく、他人と距離を置いているボンド像が隠れています。僕たち観客は彼の驚異的な身体能力に驚きながらも、時にその繊細な内面には共感せざるを得ないのです。

ダニエル・クレイグ版”007” 作品紹介

ここからは最新作『ノータイム・トゥダイ』の前の4作の個別の紹介です。本記事で興味を持っていただければ幸いです。

カジノ・ロワイヤル』(2006)

おすすめ度★★★★★
原題 : Casino Royale
監督 : マーティン・キャンベル
音楽 : デビッド・アーノルド
出演 : ダニエル・クレイグエヴァ・グリーンマッツ・ミケルセンジュディ・デンチ


ダニエル・クレイグを主役に迎えた第1作。原作小説の第1作『カジノ・ロワイヤル』(邦訳は東京創元社から発行) を初の映画化した作品であり、”007ビギンズ”とでも言うような内容。前述のようにこの作品から、前の作品とは別のリブート作品として再出発しています。
90年代ボンドの名作007/ゴールデンアイを監督したマーティン・キャンベルが手掛けました。

いつしか“007”定番となったあまりにも荒唐無稽な展開や設定を排し、あくまでリアリティを下敷きにして所々に茶目っ気(AEDのくだりはは屈指の名シーン!)を残しながら、物語はジェームズボンドという人間の内面とその魅力を描き出すことに終始しています。結果、まるで文芸映画のような味わい深い魅力を獲得しています。

淡々と描写される敵役のル・シッフル(マッツ・ミケルセンが怪演!)とのカジノの勝負はいい意味で地味であり、ボンドのタキシードの着こなしやル・シッフルのシックな出立ち、定番のウォッカマティーニの透明感や、ヒロインであるヴェスパー(エヴァ・グリーン)の豪奢な美貌を際立たせ、かえって映画を彩る背景を絢爛豪華に際立たせます。

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観光映画としても、舞台となるカジノのあるモンテネグロや、終盤のヴェネツィアの美しさには圧倒されます。

キャラクターに目を向けると、リアリティをベースにしているからこそ、いかにボンドという男が荒唐無稽な存在であるかを際立たせる、上司”M”(ジュディ・デンチ)とボンドのと丁々発止の掛け合いも楽しい。

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ボンドガール、ヴェスパーを演じたエヴァ・グリーンが見せる様々な表情も素晴らしい。気さくで悪戯っぽい微笑みと大胆不敵でフェミニンな雰囲気が共存するファムファタールぶりの裏で、彼女の本当の人間性を感じさせる繊細な演技が作品に強い説得力を与えています。ラストシーンの眼差しは忘れられないでしょう。

作中でボンドがヴェスパーと楽しんだウォッカとジンのマティーニは、ヴェスパー・マティーニという名でカクテルにもなっています。


↓レシピなど
ヴェスパー (カクテル) - Wikipedia


↓『007は二度死ぬ』の舞台になったニューオータニで期間限定ヴェスパー・マティーニが注文できます! 行きたい!
www.newotani.co.jp


慰めの報酬』(2008)

おすすめ度★★★☆☆
原題 : Quantum of Solace
監督 : マーク・フォスター
音楽 : デビッド・アーノルド
出演 : ダニエル・クレイグオルガ・キュリレンコマチュー・アマルリック


ダニエル・クレイグ版“007”第2作。『カジノ・ロワイヤル』の興行的、批評的成功を受けて、直接の続編として作られた初のボンド映画。原案は短編「ナッソーの夜」

前作から引き続きお馴染み“007”シリーズからのリアリティ路線の翻案ーー荒唐無稽でありながらスタントを駆使した実写ベースのリアリティのあるアクション、自分のシマのことしか考えてないセコさ故に現実の犯罪者感のあるヴィラン、浮気なプレイボーイというより自暴自棄なボンド像ーーは洒落っ気があり、大いに楽しめます。

原題にもなっているクァンタムという謎の多国籍犯罪結社が登場します。往年のシリーズのスペクターを思わせるその謎の組織を追っていくことがストーリーの核になっています。当時流行の『ボーン・アイデンティティシリーズ風のストーリーは賛否両論でしたが、スピーディーな展開と演出には異論はないでしょう。

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オープニングは前作ラストのイタリアから始まり、前作から対比的に南アメリカのハイチやボリビアの砂漠など乾いた夏の雰囲気のある舞台が特徴的。広大な砂漠をボンドガール・カミーユ(ウクライナ出身のオルガ・キュリレンコが名演!)がヒールを手に持って裸足で歩く姿が印象的です。

キャラクターという点では本作の悪役であるマフィアのフロント企業代表、ドミニク・グリーンを演じたマチュー・アマルリックの小物感、爬虫類的なギョロギョロした目付きがいい味出しています。

個人的な思い入れという感じですが、90年代のピアース・ブロスナン版には関心がなかった自分が、本作の予告編ーーボンドガールのちょっとベタで大袈裟なキャラクターやボンドのクールさ、お茶目さと合わせて、作品のトーンはシリアスかつダークな雰囲気ーーを見て“007”シリーズに興味を持ったことがあり、映画的には傑作ではないんですけど好きな作品です。

あとレトロで詩的な邦題が良いです。90年代からの流行りの原題カタカナ路線もいいですが、洋画の日本語タイトルでこういう面白い邦訳も増えて欲しいと思います


スカイフォール』(2012)

おすすめ度★★★★★
原題 : Slyfall
監督 : サム・メンデス
音楽 : トーマス・ニューマン
出演 : ダニエル・クレイグハビエル・バルデムジュディ・デンチレイフ・ファインズ


ダニエル・クレイグ版“007”第3作。前作が批評家からの評価が芳しくなかったからか、4年の間を空けてアカデミー賞受賞経験もあるサム・メンデス監督を迎えて再び再出発を図った意欲的な一作。結果として興行的、批評的にも大成功を収め、アデルの印象的な主題歌“Sky fall”も”007”史上初めてアカデミー主題歌賞を受賞する快挙を成し遂げた話題作です。本作でダニエル・クレイグ版”007”の評価が固まったといっても過言ではないでしょう。この作品で”007”に初めて触れた人も多いかもしれません。

サム・メンデス監督とプロデューサー達は作品性を重視して前作『慰めの報酬』から再び作風を一新。”007”エージェントの新人時代を描いていた前2作から一転、老兵となったボンドの苦境をテーマに選びます。

「時代遅れ」であると、所属するMI-6から厄介者扱いされるボンドと、国から厄介者扱いされる諜報部隊である”00”部門。かつて世界に君臨した大英帝国の没落のメタファーとも言える物語設定は、作品に品格を与えています。

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そしてこの物語の最大の魅力は、老いて捨てられかけているボンドと、かつて捨てられた男ーーハビエル・バルデム演じる悪役、過去の”00”諜報員シルヴァとの”M”(ジュディ・デンチ)を巡る愛憎劇でしょう。シルヴァとボンドの表裏一体な関係と、シルヴァの”M”に対する偏執的な愛情は見るものをゾッとさせます。『羊たちの沈黙』を思わせるハビエル・バルデムのとあるシーンは鳥肌ものです!

舞台は前半の異国情緒溢れるマカオや後半の霧に包まれたスコットランドの原野など、前2作とカラーの違うロケーションを駆け回ります。

また本作から往年のシリーズお馴染みのMI-6のメンバー達も再登場するのもポイントです。特にキャラクターを一新してオタク系の若者になった”Q”(ベン・ウィショー)、少ない登場時間ながら強い印象を残す名キャラクターですね。




『スペクター』(2015)

おすすめ度★★★★☆
原題 : Spectre
監督 : サム・メンデス
音楽 : トーマス・ニューマン
出演 : ダニエル・クレイグクリストフ・ヴァルツ、レア・セドゥ、モニカ・ベルッチ


ダニエル・クレイグ版“007”第4作。『スカイフォール』の大成功を受けてサム・メンデス監督続投となり、”007”往年の敵組織でありながら長らく権利問題で登場できなかったスペクターが遂に再登場した記念碑的作品。また、当初はダニエル・クレイグ版の最終作として作られた背景があり、フィナーレを飾るに相応しいとにかく豪華な一作です。

冒頭のメキシコ「死者の日」の一大シーケンスから始まり、美しい夜のローマ、女王陛下の007のオマージュであるアルプスの壮大な雪景色、同じくロシアより愛をこめてモチーフのモロッコ寝台特急の場面、スペクターを追ってとにかくボンドが色々な所へ旅をします。また同監督の前作『スカイフォール』と対照的にダニエル・クレイグ版3作全てを総括するような展開も多く、シリーズのファンには嬉しい要素です。そして”007”シリーズ全てのオマージュも多用されており、特に名作『女王陛下の007』の影響は強く感じられます。もちろん本作からでもそのゴージャスさに圧倒され、ちょっとコミカルな展開を十分楽しめるでしょう。

アクションも前3作以上にド派手で、壮大な大立ち回りには興奮させられます。ギネス記録にもなったある大爆発シーンや、序盤と終盤のヘリコプターを巡る一連のシーンはお気に入りのシーンです。

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また、ボンドとヒロイン・マドレーヌ(レア・セドゥ)との逃避行の過程での様々な衣装替えや、往年の悪役キャラクターを連想させる謎の怪力男Mr.ヒンクス(デビッド・バウティスタ)の存在、シンメトリーな構図を多用した象徴的な絵作りなど、リアリティよりも映画的な楽しさを重視した余裕のある作風が特長です。比較的シリアス路線の前3作と傾向が異なるので好みが分かれるところですが、本作はこちらも身構える必要なくポップコーン片手に大いに楽しめます。

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本作ラストで一度完結したかに見えたダニエル・クレイグ版”007”ですが、本当に最後の最後となる『ノータイム・トゥ・ダイ』があと1作、製作されることになります。『ノータイム・トゥ・ダイ』は本作『スペクター』の直接の続編となっています、本作を予習してから見るとより楽しめるでしょう。





『ノータイム・トゥ・ダイ』予告編


番外編『ジェームズ・ボンドとして』(2021)

ダニエル・クレイグ15年の軌跡をドキュメントしたAmazon Prime 映画ジェームズ・ボンドとして』 シリーズのプロデューサー、バーバラ・ブロッコリマイケル・G・ウィルソン、そしてダニエル・クレイグの対談形式で、クレイグ起用の背景や当時のバッシングと再評価、クレイグが現代における”007”像に賭けた想いなどが綴られます。最新作『ノータイム・トゥ・ダイ』のクランクアップの時にクレイグが行ったスピーチは感動ものです。

www.amazon.co.jp




*1:実在するイギリス諜報機関MI6のスパイという設定。しかし毎回「ボンド、ジェームズ・ボンド」と自己紹介することがお決まりになっているように、隠密活動をしている様子はない。諜報活動の為に敵を殺害することを許可されている「殺しのライセンス」を持つ”00”のコードネームを与えられている。職権を思い切り駆使して世界中の観光地を旅しながら、毎回敵と新しい恋人を求めて駆け回っている。そんな感じ

*2:Quartermaster=軍事需品係という意味らしい、ノータイム・トゥ・ダイ パンフレットより