映画についての雑感

最新作から、懐かしい80, 90, 00年代の映画の思い出や、その他、海外アニメや小説、ゲーム、音楽などの雑多で様々な芸術作品について

ヴィクトル・ユゴーのエスメラルダ、コゼットと”アデルの恋の物語 (1975)”

アデルの恋の物語 (原題 : L'Histoire d'Adèle H.)”という映画を知っていますか? フランス恋愛映画界の巨匠 フランソワ・トリュフォー監督 (1932-1984) の作品で、『レ・ミゼラブル』『ノートルダム・ド・パリ』などで知られる19世紀のフランスの文豪ヴィクトル・ユゴーの娘、アデル・ユゴーの狂騒的な半生を描いた伝記映画です。おそらくこの映画はトリュフォー監督やアデルを演じたイザベル・アジャーニと共に語られることが多いのだと思いますが、趣向を変えてヴィクトル・ユゴーの描いた文学の世界との相似性みたいなものを書いてみようと思います。ユゴーの小説は結末までのネタバレなし(?)、映画”アデルの恋の物語”については結末までのネタバレありです。映画を観てみようと思ってる方はこの下のあらすじまでにしておいてくださいね!

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ラーヤと龍の王国 : ラーヤは一体何を信じたのか?

先日、映画館で鑑賞しました。エヴァンゲリオン人気で混雑してるかなと思ったけど、日曜の夜だったこともありガラガラ。ラーヤはディズニーが日本の映画業界とちょっとトラブってるらしく、大手シネコンで上映されない事態に陥っていて、近年のディズニー作品と比べると上映館も広告もすごく少ない。ですが、観た方ならお分かりだと思いますが、ディズニー近作の中でも絵作りやアクション、メッセージ性などかなり意欲に富んだ作品です!

実際この作品、批評や宣伝では「新しい」とか「現代的」だとか「アップデートされた」などと評されることが多いのですが、何がどう新しいのか、特徴的なのか。宣伝で言っている「信じる」とは、一体何を信じたのか? ネタバレありで述べてみます。

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ラーヤと龍の王国 ポスター©Disney
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シン・エヴァンゲリオン劇場版 : 庵野監督が本当に描きたかったこととは?

度重なる延期の末に遂に公開された『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を先週の土曜日に見てきました。見終わって暫く経ちましたが、まだ僕の中ではこの映画は一体なんだったのか、庵野秀明監督が何を伝えたいのか良く分かりません。分からないなりに、思うところをこのブログの趣旨に則り映画として見た上での感想という感じで書いてみました。話題だから見に行ったくらいの熱量の人〜久々にエヴァ見たよ、って人を対象に書いてます。僕自身もQを映画館で見て以来エヴァに触れてない程度のライトなファンです。以下、作品紹介の後は旧作含めて遠慮なくネタバレしていくので、観る予定がある方はご注意くださいね!

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©カラー/Project Eva. ©カラー/EVA製作委員会 ©カラー
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フォロウィング : クリストファーノーラン監督の長編デビュー作

先日、かなり久々にTSUTAYAでレンタルDVDコーナーをdigっていたら、尊敬するクリストファーノーラン監督の長篇デビュー作であるインディーズ映画、フォロウィングが置いてあったので借りてしまいました。ノーランの作品で唯一の観たことない作品でございます。昨年の “テネット” が個人的にはハズレであったので、ちょっと冷め気味のノーラン熱ですが、それゆえに冷静に鑑賞することができました。観たことない方向けにネタバレなしで感想を述べさせてもらいます。ノーラン監督ファンや映画ファンにはオススメです

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↓TENETのレビューはこちら
numbom2020.hatenablog.com

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ソウルフル・ワールド レビュー : 人生の意味を見つめ直す

2021年最初に観た映画はディズニー・ピクサー合作 ソウルフル・ワールドでした。本来は劇場公開される予定でしたが、Disney+での配信での公開になってしまいました。同じような形で配信のみになった”ムーラン (2020)” と異なり、こちらは追加費用なしで見られます。

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© 2021 Disney and its related entities

物語の舞台はアフリカ系アメリカ人で、ジャズピアニストを夢見る非常勤講師である主人公 ジョーが生きる現世と、生まれる前の魂たちが暮らす生前・死後の世界、それぞれが描かれます。ファンタジックでありながら無機的な生前の世界を表現した画期的なアニメーションは、脚本・監督を担当したピート・ドクターの監督作 インサイド・ヘッド (2015)”を彷彿とさせます。”インサイド・ヘッド”同様に科学的考証に基づいた描写も魅力ですが、今作はそれ以上に、静かに人生の意味を見つめ直すハートフルな作品でした。子供から大人まで楽しめる傑作、むしろ、一見して気づきにくい本作が扱う重大なテーマは、大人向けと言えるかもしれません。

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